社団法人石川県畜産協会 ふん尿処理の実際 -牛のふん尿処理編-
1.牛の糞尿処理の概要
2.牛の糞尿処理基本システム
2−1 基本システムとその考え方
2−2 基本システムにおける堆肥化
2−3 基本システムにおける液肥化
3.施設の低コスト化へ向けての取り組み
2.牛の糞尿処理基本システム
参考資料
2.牛の糞尿処理基本システム
 糞尿処理施設を整備する場合、設計に必要な基本事項が十分に整備されていないため、効率的に施設整備を行う上で支障となっている。
 本編では、糞尿処理施設の整備計画や設計にあたっての基本的な考え方を「糞尿処理基本システム」として整理する。

2−1 基本システムとその考え方
(1) 糞尿の性状分類
 基本システムは、発生量が多く処理が難しいとされる乳牛の糞尿を対象としている。牛舎から排出される糞尿の性状別に3つのシステムに分類した。また、肉牛については、乳牛ソリッド状糞尿と同じ処理方法で対応できるものとした。
 糞尿の性状は、水分率によりソリッド(固体状)、セミソリッド(半固体状)、スラリー(液体状)に分類できる。それぞれの性状についてまとめると表2−1−1のようになる。
 基本システムは、牛舎から排出される糞尿の性状別に、その性状に適した処理方法をまとめたものである。
 
表2−1−1 基本システムにおける糞尿の性状別分類
  性状
ソリッド  敷料が十分に使用され、堆積すると発酵が始まる状態のふん尿。スタンチョン牛舎で飼養し、敷料の使用量が多い場合がこれにあたる。また、肉牛牛舎から排出されるふん尿(含敷料)もこの性状に該当する。
セミソリッド  固形物として取り扱うことが出来るが、水分が高く堆積しても発酵が始まらない状態のふん尿。スタンチョン牛舎で飼養し、敷料の使用量が少ない場合がこれにあたる。管内酪農家の90%程度が該当する。
スラリー  固形分混合の液体(スラリー)として取り扱わなければならない状態のふん尿で、堆肥化と液肥化の対象となる。処理には高度の技術を要する。フリーストール牛舎で飼養し、敷料の使用量が少ない場合がこれにあたる。

(2) 基本システムにおける処理方法
 基本システムにおける処理の考え方を以下に示し、タイプ別に表2−1−2にまとめた。
[1] スタンチョン飼養及び肉牛は、堆肥舎で切り返しを行い腐熟堆肥とする。
水分率の高い糞尿は、ハウス乾燥施設で水分調整する。
[2] スタンチョン飼養で分離された尿は、曝気処理により腐熟尿とする。
[3] フリーストール飼養は、スクリュープレス式の固液分離機を用いて、固形分を分離してから分離液(スラリー)を曝気により腐熟スラリーとする。
固形分は堆肥舎で切り返しを行い腐熟堆肥とする。
 
表2−1−2 基本システムにおけるタイプ別処理法
処理タイプと
ふん尿の性状
処理方法
タイプI
(ソリッド)
 スタンチョン飼養で、麦稈等の敷料を豊富に使用しているふん尿、および肉牛でソリッド状を呈するふん尿の処理方法。堆肥舎で堆積・切返しすることにより腐熟堆肥とする。敷料を含むふん尿の水分率が70%程度と、発酵可能な状態となっていることが前提である。スタンチョン飼養における尿は、貯溜槽でばっ気し腐熟尿とする。
タイプII
(セミソリッド)
 スタンチョン飼養で、麦稈等の敷料が比較的少なく、セミソリッド状を呈するふん尿の処理方法。ハウス乾燥施設で水分率を発酵可能な状態に調整する。その後、タイプIと同様の処理を行い腐熟堆肥とする。尿もタイプIと同様にばっ気し腐熟尿とする。
タイプIII
(スラリー)
 フリーストール飼養で敷料は少なく、糞と尿が混合された状態で、スラリー状を呈するふん尿の処理方法。固液分離機を用い、固形分と分離液に分けて処理する。固形分は、堆肥舎で切返し腐熟堆肥とする。分離液は、ばっ気し腐熟スラリーとする。

糞尿処理基本システム分類フローシート


2−2 基本システムにおける堆肥化
(1) 水分調整方法と施設構成
 糞尿の水分調整には二つの方法がある。一つはもみ殻やおが屑などの水分調整資材を用いる方法。もう一つはハウス乾燥施設などの施設・機械を使って水分を蒸発させる方法である。

水分調整資材を利用する場合
敷料が豊富に使われ、排出される糞尿の水分率が発酵可能な70%になっているか、または副資材を添加する場合。
 水分率を70%以下に調整した堆肥原料を、堆肥舎に高さ2.0mで堆積する。これをフロントローダーやホイルローダーで、月に1〜2回程度の撹拌・切り返しを行い、3ヶ月間程度で腐熟堆肥に仕上げる。

ハウス乾燥施設を利用する場合
[1] 糞尿をハウス乾燥施設で、水分を70%まで低下させる。その後堆肥舎に移動し、高さ2.0mで堆積する。
[2] フロントローダやホイルローダで、月に1〜2回程度の撹拌・切り返しを行い、3ヶ月間程度で腐熟堆肥に仕上げる。ただし、ハウス乾燥施設は11月から2月までの4ヶ月間、乾燥能力が著しく低下するため稼動を停止する。


2−3 基本システムにおける液肥化
(1) 尿の液肥化処理施設
 スタンチョン牛舎から排出される尿(厳密には汚水や漏汁を含む)の処理施設としては、浄化処理施設が考えられるが、これは建設費、維持管理費が高い上施設管理も難しい。
 そこで、基本システムでは貯留槽で直接曝気する方式を採用し、低コスト化を図っている。
 散布前に20日程度曝気処理を行うことにより、悪臭の軽減が図られる。

(2) スラリー処理施設
 基本システムでは、糞尿を固液分離し、固形物は堆肥舎で、分離液は曝気槽でそれぞれ腐熟化する。このスラリー状糞尿の液肥化を行う施設がスラリー処理施設である。これは、原スラリー槽、固液分離器、曝気槽、貯留槽により構成する。
 スラリー処理は、固液分離したスラリーを加水等により適正濃度に調整して曝気処理を行う。曝気処理により腐熟したスラリーは散布時期まで貯留施設に貯留し、スラリー散布機で圃場に還元する。基本システムでは効率的に固液分離を行うためにスクリュープレス方式を採用する。


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