社団法人石川県畜産協会 ふん尿処理の実際 -牛のふん尿処理編-
1.牛の糞尿処理の概要
2.牛の糞尿処理基本システム
3.施設の低コスト化へ向けての取り組み
2.牛の糞尿処理基本システム
4−1 施設規模の算定方法と諸元
4−2 ソリッド状糞尿処理施設
4−3 セミソリッド状糞尿処理施設
4−4 スラリー状糞尿処理施設
4−5 タイプ別のコスト計算
参考資料
4.基本システムの施設規模とコスト計算
 本章は、実際に糞尿処理施設の設計に携わる人が、設計内容をよく理解できるよう考え構成した。ソリッド、セミソリッド、スラリー状の糞尿処理に対応したタイプ1、タイプ2、タイプ3の基本システムについて、設計事例及び経費試算を記載している。

4−1 施設規模の算定方法と諸元
(1) 経営規模と糞尿処理量
経営規模
 タイプ別事例に用いた酪農経営の飼養形態、経営規模の設定については、今後主流となると考えられる中規模から大規模経営を想定し分類した。タイプ1及びタイプ2は「現状の生産方式で効率的な酪農を目指すスタンチョン飼養(経産牛40頭)」、タイプ3は「新たな生産方式で大規模酪農を目指すフリーストール飼養(経産牛100頭)」を用いている。具体的な経営規模は表4−1−1のとおりである。

表4−1−1 タイプ別の酪農経営規模
経営類型 飼養頭数 成牛換算頭数 分類
酪農専業
(スタンチョン飼養)
経産牛40頭
育成牛19頭
40+19×0.375※2=47
≒50頭
タイプI
タイプII
酪農専業
(フリーストール飼養)
経産牛100頭
育成牛47頭
100+47×0.375=117.6
≒118頭
タイプIII

糞尿処理量
 乳牛の高必乳化により、排泄される糞は40s、尿は20kgとされている。通常はこれらの糞と尿を全量回収するものとして施設規模を算定している。
 しかし、本書では以下の考えにより、全量を回収することは無理であると判断し、糞尿処理量を表4−1−2のように設定した。
[1] 放牧地やパドックで排泄される糞や尿は、回収することが不可能。
[2] 冬期間の舎内期におけるパドックでの運動時間は1日6時間程度

表4−1−2 乳牛1頭当たりの糞尿処理量
種類 ふん尿処理量 備考
40kg×(24-6)÷24  =30kg/頭・日  
尿 20g×(24-6)÷24+5kg=20kg/頭・日 ※洗浄水等の汚水として処理量にカウントする


(2) 堆肥舎
 施設規模は、堆肥原料とその容積重、腐熟堆肥(仕上がり堆肥)量とその容積量、処理日数、堆積高さで決まる。堆肥原料は腐熟化の過程で、乾物の分解に伴う熱で水分が低下していく。このため、堆肥原料と仕上がり堆肥は、重量、水分率、容積重が異なる。
 堆肥舎の規模は、堆肥原料量と仕上がり堆肥の平均容積に処理日数を乗じ、この値を堆積高さで除して求める。
 本書ではこうして計算された値に、「堆肥化マニュアル」に示されている、堆肥原料の水分変動や、立地・気象条件の地域性を考慮した余裕率30%(水分変動で10%、地域性で20%)を乗じて堆肥舎の規模を求める。なお、乾物分解率は堆肥化施設設計マニュアルを参考にした。
[1] 堆肥原料量(kg/日)
  a. 処理量(kg/日)=
糞量(kg/頭・日)×頭数+敷料・水分調整資材(kg/頭・日)×頭数
  b. 乾物(kg/日)=糞and敷料・水分調整資材量(kg/頭・日)×頭数×乾物率(%)
  c. 水分量(kg/日)=糞and敷料・水分調整資材量(kg/頭・日)×頭数×水分率(%)
[2] 乾物減少量(kg)=堆肥原料(糞+敷料・水分調整資材)の乾物量(kg)×(乾物分解率/100)
[3] 乾物分解発熱量(kcal)=乾物減少量×糞and敷料・水分調整資材の分解発熱量(kcal/kg)
[4] 水分蒸発量(kg)=総分解発熱量(糞+敷料・水分調整資材)÷水分蒸発量(kcal/kg)
[5] 仕上がりの堆肥量
  a. 堆肥重量(kg)=堆肥処理量(kg)−(乾物減少量(kg)+水分蒸発量(kg))
  b. 乾物量(kg)=処理前総乾物量(kg)−乾物減少量(kg)
  c. 水分量(kg)=処理前総水分量(kg)−水分蒸発量(kg)
[6] 容積重
  a. 仕上がり堆肥容積重:堆肥化施設設計マニュアルから算出する。
  b. 平均容積重(kg/m3)=(堆肥原料容積重(kg/m3)+仕上がり堆肥容積重(kg/m3)÷2
[7] 必要容量(m3)=(堆肥原料量(kg)+仕上がり堆肥容積重(kg)/2÷平均容積重(kg/m3)×処理日数
[8] 堆肥舎面積(m2)=必要容積(m3)÷堆積高さ(m)×余裕率(%)
 
表4−1−3 堆肥舎の設計諸元
施設の種類 諸元
堆肥舎
処理量(水分率): 成牛 糞30kg/頭・日(85%)
  敷料・水分調整材 使用量実数s/頭・日
麦稈(10%),オガクズ・バーク(25%)
処理日数 90日
乾物分解発熱量 糞     4500kcal/kg
  水分調整材 3000kcal/kg
水分蒸発熱量 900kcal/kg
容積重 堆肥原料800kg/m3
余裕率 水分変動10%(タイプIIとIIIは水分変動を見込まない)
地域係数20%
堆積高さ 2.0m


(3) ハウス乾燥施設
 施設規模は、乾燥能力を表す乾燥床面積1m2当たりの蒸発量(kg/日)と、蒸発させる水分量によって算出される。
 本書では、試験データから乾燥能力を4.5kg/m2とし、堆肥化原料の水分を70%まで下げる目的で乾燥処理を行う。
 冬期間(11月〜2月までの4ヶ月間)は、現場試験結果から乾燥能力を見込むことができないので、この期間の稼動を停止し、残りの8ヶ月で年間発生量を処理できる施設規模とする。
[1] 処理量(kg/日)=
糞量(kg/日)×頭数+敷料・水分調整資材(kg/日)×頭数
[2] 必要蒸発水分量(kg/日)=
処理量(kg/日)×(乾燥原料水分率(%)−乾燥目標水分率(%))/100−乾燥目標水分(%)
[3] 必要乾燥床面積(m2)=
必要蒸発水分量(kg)÷乾燥能力(kg/m2)×12/8※1
[4] 乾燥床延長(m)=
必要乾燥床面積(m2)÷乾燥床幅員(m)+搬入・搬出口延長(m)
[5] ハウス延長(m)=乾燥床延長(m)+余裕長(m)
[6] ハウス乾燥施設面積(m2)=ハウス延長(m)×ハウス幅(m)
 
表4−1−4 ハウス乾燥施設の設計諸元
施設の種類 諸元
ハウス乾燥
施設
処理量(水分率) 成牛 糞30kg/頭・日(85%)
  敷料・水分調整材 使用量実数s/頭・日
  麦稈(10%),オガクズ・バーク(25%)
乾燥能力 4.5/m2/日(稼動期間3月〜10月)
乾物分解率 22.5%(日当り乾物分解率0.25%/日)
※1 12/8 1年分を8ヶ月で処理することによる割増し
搬入・搬出口延長 3m×2=6m
余裕長 2m
ハウス幅 8.1m


(4) 曝気装置付貯留槽
 貯留槽の容量は、尿汚水の1日当たり発生量と貯溜日数によって算出される。
[1] 貯溜槽容量(m3)=
汚水水※1量(kg/頭・日)×飼養頭数×貯留日数(日)
[2] 送気量(m3/h)=貯溜槽容量(m3

表4−1−5 曝気装置付貯溜槽の設計諸元
施設の種類 諸元
ばっ気装置付
貯溜槽
処理量 成牛 尿汚水※120kg/頭・日
貯溜日数 180日
※1 尿汚水とは、尿と洗浄水などが混合したものをさす


(5) スラリー曝気連続投入施設
  原スラリー槽、第1曝気槽、第2曝気槽、貯溜槽の必要容量は、1日当たりのスラリー発生量と、処理日数、貯溜日数によって算出される。
[1] スラリー発生量(kg/日)=
(糞量(kg/日)+尿汚水(kg/日)+敷料(kg/日))×頭数
[2] 容量(m3
  a: 原スラリー槽容量(m3)=
スラリー発生量(kg/日)×必要日数(日)
  b: 第1曝気槽容量(m3)=
スラリー発生量(kg/日)×必要日数(日)×分解率
  c: 第2曝気槽容量(m3)=
スラリー発生量(kg/日)×必要日数(日)×分解率
  d: 貯溜槽(m3)=
スラリー発生量(kg/日)×必要日数(日)×分解率
[3] 送気量(m3/h)=貯溜槽容量(m3)×2

表4−1−6 スラリー曝気連続投入施設の設計諸元
施設の種類 諸元
スラリーばっ気
連続投入施設
処理量 成牛 糞30kg,尿汚水20kg,敷料2kg/頭・日
必要日数 原スラリー槽  3日
第1ばっ気槽  15日
第2ばっ気槽  15日
貯 溜 槽  180日
分離率 0.8(固液分離処理によって回収される分離液量の割合)


4−2 ソリッド状糞尿処理施設
(1) タイプ1・スタンチョン飼養・成牛50頭

表4−2−1 タイプ1の施設概要
タイプ分類 タイプI
ふん尿性状 ソリッド (敷料や水分調整資材が多量に用意され、堆積発酵する水分状態に調整することができる場合)
蓄種・飼養頭数 乳牛・成牛50頭
牛舎形式 スタンチョン(ふん尿分離)
システム概要
施設設計規模
算定条件
1頭当り
処理量

尿汚水
麦稈使用量
30kg/頭・日(水分率85%)
20kg/頭・日(水分率85%)
7.5kg/頭・日(水分率10%)
堆肥舎 処理日数
90日
乾物分解率 22.5%
乾物分解発熱量 糞 4,500kcal/kg
麦稈3,000kcal/kg
水分蒸発熱量 900kcal/kg
容積重※1 処理前800kg/m3
処理後702kg/m3
堆積高さ 2.0m
余裕率 水分変動10%+地域係数20%
計30%
ばっ気装置付
貯溜槽
貯溜期間 180日
施設仕様 堆肥舎 上部 準PTハウス構造
下部 三面擁壁(擁壁高=H1.2m)
コンクリート厚t=15cm
ばっ気装置付貯溜槽 遮水型
ラグーン
余裕高H=0.5m
施設規模 堆肥舎 121m2 (仕上がり堆肥量:453トン/年)
ばっ気装置付貯溜槽 180m3 (仕上がり液肥量:365トン/年)
備考 ※1 堆肥化施設設計マニュアル参照

タイプI一般施設配置図
処理フロー図


(2) タイプ1施設規模計算

表4−2−2 タイプ1における施設設計規模算定条件
項目 条件
基本条件 成牛換算飼養頭数 50頭
牛舎形式 スタンチョン形式
1頭当り処理量 30kg/頭・日(水分率85%)
尿汚水 20kg/頭・日(水分率100%)
麦稈使用量 7.5kg/頭・日(水分率10%)
堆肥舎 処理日数 90日
乾物分解率 22.5%
乾物分解発熱量 糞 4500kcal/kg
麦稈3000kcal/kg
水分蒸発熱量 900kcal/kg
容積重 処理前800kg/m3
処理後702kg/m3
堆積高さ 2.0m
余裕率 水分変動10%+地域係数20% 計30%
ばっ気装置付
貯溜槽
貯溜期間 180日


堆肥舎
[1] 堆肥原料量(s/日)
  a: 処理量
    30s×50頭+7.5s×50頭=1,875s/日
  b: 乾物量
    糞 :30s×50頭×(100−85)÷100=225s/日
麦稈:7.5s×50頭×(100−10)÷100≒338s/日
  c: 水分量
    糞 :30s×50頭×85÷100=1,275s/日
麦稈:7.5s×50頭×10÷100≒38s/日
[2] 乾物減少量(s)
  (225s/日+338s/日)×(22.5÷100)≒(51+76)≒127s/日
糞 :51s/日
麦稈:76s/日
[3] 乾物分解発熱量(kcal/日)
  51s/日×4,500kcal/s+76kg/日×3,000kcal/s=457,500kcal/日
[4] 水分蒸発量(kcal/日)
  457,500kcal/日÷900kcal/s≒508s/日
[5] 仕上がり堆肥量(s/日)
  a: 重量
    1,875s/日−(127s/日+508s/日)=1,240s/早
  b: 乾物量
    (225s/日+338s/日)−(51s/日+76s/日)=436s/日
  c: 水分量
    (1,275s/日+38s/日)−508s/日=805s/日
水分率:805÷1,240×100≒65%
[6] 容積重(kg/m3
  a: 仕上がり堆肥容積重(堆肥化施設設計マニュアル参照)
    水分率64、66%の堆肥の容積重がそれぞれ760、800s/m3であることから、水分65%の堆肥の容積重を次のように算出した。
    (760s/m3+800s/m3)÷2×0.9※1=702s/m3
    ※1)発酵終了時堆肥に用いる係数
  b: 平均容積重
    (800s/m3+702kg/m3)÷2=751kg/m3
[7] 必要容量(m3
  (1,875kg/日+1,240s/日)/2÷751s/m3×90日≒186.6m3
[8] 堆肥舎面積(m2
  186.6m3÷2.0m×1.3=121.29m2
  
曝気装置付貯溜槽
[1] 貯溜槽容量(m3
  20s/頭・日×50頭×180日=180,000s≒180t
                     =180m3
[2] 送気量(m3/h)
  180m3/h


4−3 セミソリッド状糞尿処理施設
(1) タイプ2・スタンチョン飼養・成牛50頭

表4−3−1 タイプ2の施設概要
タイプ分類 タイプII
ふん尿性状 セミソリッド
蓄種・飼養頭数 乳牛・成牛50頭
牛舎形式 スタンチョン(ふん尿分離)日中パドック放牧
システム概要
施設設計規模
算定条件
1頭当り
処理量

尿汚水
麦稈使用量
30s/頭・日(水分率85%)
20s/頭・日(水分率100%)
2s/頭・日(水分率10%)
ハウス乾燥施設 乾燥能力 4.5s/m2
稼働期間 8ケ月間(3月〜10月)
乾燥床幅 6.0m
搬入搬出口延長 3.0m×2
ハウス余裕長 2.0m  
ハウス幅 8.1m
堆肥舎 処理日数
90日
乾物分解率 22.5%
乾物分解発熱量 糞 4,500kcal/s
麦稈3,000kcal/s
水分蒸発熱量 900kcal/s
容積重※1 処理前800s/m3
処理後648s/m3
堆積高さ 2.0m
余裕率※2 地域係数20%
ばっ気装置付
貯溜槽
貯溜期間 180日
施設仕様 ハウス輝燥施設 鉄骨構造  
乾燥床 一部コンクリート
堆肥舎 上部 PTハウス構造
三面擁壁(擁壁高H=1.2m)
下部 コンクリート厚t=15p
ばっ気装置付貯溜槽 貯留期間 180日
施設規模 ハウス乾燥施設 312m2  
堆肥舎 64m2 (仕上がり堆肥量:240トン/年)
ばっ気装置付貯溜槽 189m3 (仕上がり液肥量:365トン/年)
備考
※1 堆肥化施設設計マニュアル参照
※2 ハウス乾燥施設で水分調整をすることから、水分変動は見込まない
  
タイプII一般施設配置図
処理フロー図

(2) タイプ2施設規模計算書

項目 条件
基本条件 成牛換算飼糞頭数 50頭
牛舎形式 スタンチョン形式
1頭当り処理量 30s/頭・日(水分率85%)
尿汚水 20kg/頭・日(水分率100%)
麦稈使用量 2s/頭・日(水分率10%)
ハウス乾燥施設 乾燥能力 4.5s/m2
稼働期間 8ケ月間(3月〜10月)
幹燥床幅 6.0m
搬入搬出口延長 3.0m×2
ハウス余裕長 2.0m
ハウス幅 8.1m
堆肥舎 処理日数 90日
乾物分解率 22.5%
乾物分解発熱量 糞 4500kcal/kg 麦稈3000kcal/kg
水分蒸発熱量 900kcal/kg
容積重※1 処理前800kg/m3
処理後648s/m3
堆積高さ 2.0m
余裕率※2 地域係数20%
ばっ気装置付
貯溜槽
貯溜期間 180日

ハウス乾燥施設
[1] 処理量(s/日)
  30s×50頭+2s×50頭=1,600s/日
[2] 必要蒸発水分量(s/日)
  a: 乾燥原料水分率(%)
    (30×0.85+2×0.1)÷32×100≒80.3%
  b: 乾燥目標水分率(%)
    70%
  c: 必要蒸発水分量(s/日)
   
1,600s/日×
80.3%−70%
100−70%
≒549kg/日
[3] 必要乾燥床面積(m2
  549÷4.5×12/8=183m2
[4] 乾燥床延長(m)
  183m2÷6m+(3.0×2)m=36.5m
[5] ハウス延長(m)
  36.5m+2m=38.5m
[6] ハウス乾燥施設面積(m2
  38.5m×8.1m=311.85m2

堆肥舎
ハウス乾燥施設において、乾燥処理されたふん尿を堆肥原料とする。
[1] 堆肥原料量(s/日)
  a: 処理量(s/日)
    ハウス乾燥施設処理量s/日−必要蒸発水分量s/日
    1,600s/日−549s/日=1,051s/日
  b: 乾物量
    糞 :30×50×0.15=225s/日
麦稈:2×50×0.90=90s/日
  c: 水分量
    堆肥処理量s/日−乾物量s/日
    1,051s/日−(225s/日+90s/日)=736s/日
[2] 乾物減少量(s/日)
  (225s/日+90s/日)×(22.5÷100)=(51s/日+20s/日)=71s/日
  糞 :51s/日
麦稈:20s/日
[3] 乾物分解発熱量(kcal)
  51s/日×4,500kcal/s+20s/日×3,000kcal/s=289,500kcal/日
[4] 水分蒸発量(s/日)
  289,500kcal/日÷900kcal/s≒322s/日
[5] 仕上がり堆肥量(s/日)
  a: 重量
    1,051s/日−(71s/日+322s/日)=658s/日
  b: 乾物量
    (225s/日+90s/日)−(51s/日+20s/日)=244s/日
  c: 水分量
    736−322=414s/日
    水分率:414÷658×100≒63%
[6] 容積重(s/m3
  a: 仕上がり堆肥容積重(堆肥化施設設計マニュアル参照)
    算出方法は、タイプIと同様である。
    (680+760)÷2×0.9=648s/m3
  b: 平均容積重
    (800+648)÷2=724s/m3
[7] 必要容量(m3
  (1,051s/日+658s/日)/2÷724s/m3×90日≒106.2m3
[8] 堆肥舎面積(m2
  106.2m3÷2.0m×1.2=63.72m2

曝気装置付貯溜槽
[1] 貯溜槽容量(m3
  20s/日×50頭×180日=180,000s
              ≒180m3
[2] 送気量(m3/h)
  180m3/h


4−4 スラリー状糞尿処理施設
(1) タイプ3・フリーストール飼養・成牛118頭

表4−4−1 タイプ3の施設概要
タイプ分類 タイプIII
ふん尿性状 スラリー(敷料としてオガクズを2.0s/頭・日使用する場合)
蓄種・飼養頭数 乳牛・成牛118頭
牛舎形式 フリーストール(ふん尿混合)
システム概要
施設設計規模
算定条件
1頭当り
処理量

尿汚水
オガクズ
30s/頭・日(水分率85%)
20s/頭・日(水分率100%)
2s/頭・日(水分率25%)
堆肥舎 処理日数
90日
乾物分解率 22.5%
乾物分解発熱量 糞    4,500kcal/s
オカクズ 3,000kcal/s
水分蒸発熱量 900kcal/s
容積重※1 処理前800s/m3
処理後684s/m3
堆積高さ 2.0m
余裕率※2 地域係数20%
スラリー
処理施設
原スラリー槽 必要日数 3日
第1ばっ気槽 必要日数 15日
第2ばっ気槽 必要日数 15日
固液分離機 分離率=0.8※2
固形分の水分 70%
貯溜槽 貯溜期間 180日
施設仕様 堆肥舎 上部 PTハウス構造
下部 三面擁壁(擁壁高H=1.2m)
コンクリート厚t=15p
スラリー
処理施設
原スラリー槽 鉄筋コンクリート製
第1ばっ気槽 鉄筋コンクリート製
第2ばっ気槽 鉄筋コンクリート製
貯溜槽 遮水型ラグーン
固液分離機 スクリュープレス式
施設規模 堆肥舎 74m2 (仕上がり堆肥量:279トン/年)
スラリー
処理施設
一式 (仕上がり液肥量:2,240トン/年)
備考
※1 堆肥化施設設計マニュアル参照
※2 分離率=(分離液回収量)÷(全体量)

タイプIII一般施設配置図
処理フロー図

(2) タイプ3施設規模計算書

表4−4−2 タイプ3における施設設計規模算定条件
項目 条件
基本条件 成牛換算飼養頭数 118頭
牛舎形式 フリーストール形式
1頭当り処理量 30s/頭・日(水分85%)
尿汚水 20s/頭・日(水分100%)
オガクズ 2s/頭・日(水分25%)
堆肥舎 処理日数 90日
乾物分解率 22.5%
乾物分解発熱量 糞   4,500kcal/s
オガクズ3,000kcal/s
水分蒸発量 900kcal/s
容積重 処理前800s/m3
処理後684s/m3
堆積高さ 2.0m
余裕率 地域係数20%
スラリー
処理施設
原スラリー槽 必要日数  3日
第1ばっ気槽 必要日数  15日
第2ばっ気槽 必要日数  15日
園液分離機 分離率=0.8
固口回収物水分 70%
貯溜槽 貯溜期間 180日

堆肥舎
 固液分離後の固口回収物を堆肥原料とするが、あらかじめ分離前の乾物量を算出しておく。
  固液分離前の乾物量=(糞or敷料s/日)×(100−水分率)/100
  糞 :30s/頭・日×(100−85)/100=4.5s/頭・日
  敷料:2s/頭・日×(100−25)/100=1.5s/頭・日
[1] 堆肥原料量(s/日)
  a: 処理量(s/日)
    (糞+尿汚水+敷料s/日)×(1−分離率)×頭数
    (30+20+2)×(1−0.8)×118頭≒1,227s/日
  b: 乾物量
    処理量s/日×(100−固形状回収物水分率)/100
   

×(固液分離分糞乾物量s/日or固液分離前敷料乾物量s/日)

    ÷(固液分離前糞乾物量s/日+固液分離前敷料乾物量s/日)
    糞 :1,227s/日×(100−70)/100×4.5÷(4.5+1.5)≒276s/日
    敷料:1,227s/日×(100−70)/100×1.5÷(4.5+1.5)≒92s/日
  c: 水分量
    処理量×固形状回収物水分率/100
    1,227s/日×70/100≒859s/日
[2] 乾物減少量(s/日)
  (276s/日+92s/日)×(22.5÷100)≒(62kg/日+21s/日)
  ≒83s/日
  糞   :62s
  オガクズ:21s
[3] 乾物分解蒸発量(kcal/日)
  62s/日×4,500kcal/s+21s/日×3,000kcal/s=342,000kcal/日
[4] 水分蒸発量(s/日)
  342,000kcal/日÷900kcal/s=380s/日
[5] 仕上がり堆肥量(s/日)
  a: 重量
    1,227s/日−(83s/日+380s/日)=764s/日
    (680+760)÷2×0.9=648s/m3
  b: 乾物量
    (276s/日+92s/日)−(62s/日+21s/日)=285s/日
  c: 水分量
    859s/日−380s/日=479s/日
    水分率:479÷764×100≒63%
[6] 容積重(s/m3
  a: 仕上がり堆肥容積重(堆肥他施設設計マニュアル参照)
    算出方法は、タイプIと同様である。
    (680+760)÷2×0.9=648s/m3
  b: 平均容積重
    (800s/m3+648s/m3)÷2=724s/m3
[7] 必要容量(m3
  1,227s/日+764s/日)/2÷724s/m3×90日≒123.8m3
[8] 堆肥舎面積(m2
  123.8m3÷2.0m×1.2=74.28m2

スラリー曝気連続投入施設
ハウス乾燥施設において、乾燥処理されたふん尿を堆肥原料とする。
[1] スラリー発生量
  (30s/日+20s/日+2s/日)×118頭=6,136s/日
[2] 容量(m3
  a: 原スラリー槽容量
    6,136s/日×3日=18,408s
               ≒18.4m3
  b: 第1ばっ気槽容量
    6,136s/日×15日×0.8=73,632s
               ≒736m3
  c: 第2ばっ気槽容量
    6,136s/日×15日×0.8=73,632s
               ≒73.6m3
  d: 貯溜槽容量
    6,136s/日×180日×0.8=883,584s
               ≒883.6m3
[2] 送気槽(m3/h)
  883.6m3×2=1,767.2(m3/h)

4−5 タイプ別のコスト計算
 最近の環境問題への関心の高まりから、様々な事業で糞尿処理施設の整備が可能になるなど、環境管理施設に対する施策の拡充が図られてきている。
 処理施設のイニシャルコストは、事業別に積算方法が違うことや工種別の経費率などに大きな差異があるため、ここでは、直接工事費についてのみ記載することとした。

(1) タイプ1

表4−5−1 タイプ1の経営規模と糞尿の性状
飼養形態 成牛換算飼養頭数 敷料 ふん尿の性状
スタンチョン 50頭 麦稈7.5s/頭日 ソリッド

図4−5−1 タイプ1の処理フロー

表4−5−2 タイプ1の規模とイニシャルコスト
施設・機械 規模 当り単価;(千円/m2 直接工事費;(千円) 備考
一時堆積場 25m2 15 380  
堆肥舎 133m2 41 5,450  
ばっ気
処理施設
1式   5,670 原尿槽1,360千円
ばっ気装置付貯溜槽4,310千円
ホイルローダ 1.3m3級0.5台   3,400 2戸につき1台
電気設備 1式   1,280  
合計     16,180  

表4−5−3 タイプ1のランニングコスト
単位:千円/年
電気代 軽油代 機械維持
管理費※1
固定
資産税※2
合計
143 24 209 227 603
※1 機械費の5%とした
※2 直接工事費の1.4%とした

(1) タイプ2

表4−5−4 タイプ2の経営規模と糞尿の性状
飼養形態 成牛換算飼養頭数 敷料 ふん尿の性状
スタンチョン 50頭 麦稈2.0s/頭・日 セミソリッド

図4−5−2 タイプ2の処理フロー

表4−5−5 タイプ2の規模とイニシャルコスト
施設・機械 規模 当り単価
(千円/m2
直接工事費
(千円)
備考
一時堆積場 25m2 15 380  
ハウス
乾燥施設
312m2   11,310 ハウス施設5,930千円
乾燥処理槽1,530千円
撹拌移送機3,850千円
堆肥舎 68m2 41 2,790  
ばっ気処理施設 1式   5,670  
ホイルローダ 1.3m3
0.5台
  3,400 2戸につき1台
電気設備 1式   1,900  
合計     25,450  

表4−5−6 タイプ2のランニングコスト
単位:千円/年
電気代 軽油代 機械維持
管理費※1
固定
資産税※2
合計
287 71 402 356 1,116
※1 機械費の5%とした
※2 直接工事費の1.4%とした

(2) タイプ3

表4−5−7 タイプ3の経営規模と糞尿の性状
飼養形態 成牛換算飼養頭数 敷料 ふん尿の性状
フリーストール 118頭 オガクズ2.0s/頭・日 スラリー

図4−5−3 タイプ3の処理フロー

表4−5−8 タイプ3の規模とイニシャルコスト
施設・機械 規模 当り単価
(千円/m2
直接工事費
(千円)
備考
一時堆積場 25m2 15 380  
堆肥舎 133m2 41 5,450  
ばっ気処理施設 1式   26,990 原スラリー槽10,160千円
ばっ気槽9,150千円
貯溜槽7,680千円
ホイルローダ 1.3m3
0.5台
  3,400 2戸につき1台
電気設備 1式   3,830  
合計     40,050  

表4−5−9 タイプ3のランニングコスト
単位:千円/年
電気代 軽油代 機械維持
管理費※1
固定
資産税※2
合計
910 16 848 560 2,334
※1 機械量の5%とした
※2 直接工事費の1.4%とした


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