2.家畜ふん尿の処理方法について

(1)家畜ふん尿の排泄量

冒頭で日本における家畜ふん尿の発生量を紹介しましたが、もう少し詳しく見てみましょう。
家畜の排泄量は、家畜の種類、体重、飼料の種類、飲水量、飼養形態、季節など多くの条存によって異なるため、その量を正確に知ることはなかなか困難です。下の表は一般的に、家畜ふん尿処理施設の規模算定に用いられる数値です。

表1 家畜ふん尿の排泄量

      ふん(日・頭羽) 尿 合計 合計
   
     
畜種 体重 乾物量 含水量 生重 (日・頭羽) (日・頭羽) (年・頭羽)

乳用牛 搾乳牛1) 700kg 6.8kg 86% 50g 15kg 65kg 23.7t
  搾乳牛2) 600〜700kg 5.7kg 84% 36kg 14kg 50kg 18.3t
  乾乳牛 550〜650kg 4.2kg 80% 21kg 6kg 27kg 9.9t
  育成牛 40〜500kg 3.6kg 78% 16kg 7kg 23kg 8.4t

肉用牛 2歳未満 200〜400kg 3.6kg 78% 16kg 7kg 23kg 8.4t
  2歳以上 400〜700kg 4.0kg 78% 18kg 7kg 25kg 9.1t
  乳用種 250〜700kg 3.6kg 78% 16kg 7kg 23kg 8.4t

子豚 3〜30kg 0.15kg 72% 0.5kg 1.0kg 1.5kg 0.55t
  肥育豚 30〜110kg 0.53kg 72% 1.9kg 3.8kg 5.7kg 2.08t
  繁殖豚 150〜300kg 0.83kg 72% 3.0kg 7.0kg 10.0kg 3.65t

採卵鶏 - 13g 70% 43g - 43g 15.7kg
  成鶏3) - 30g 70% 100g - 100g 36.5kg
  成鶏4) - 30g 60% 75g - 75g 27.4kg

ブロイラー 成鶏 - 26g 70% 87g - 87g 31.8kg
  成鶏5) - 26g 40% 43g - 43g 15.7kg

1)生乳生産量が年間10,000kg程度の場合 4)高床式鶏舎のふんの場合
  2)生乳生産量が年間7,600kg程度の場合 5)暖房式のウインドレス鶏舎のふんの場合
  3)低床式鶏舎のふんの場合  


(2)家畜ふん尿の成分

1)汚濁成分
BOD(生物化学的酸素要求量:水の汚染度を示す尺度)やSS(浮遊物質:水中に懸濁している不溶性の物質でBODと深い関連性を持つ。)など汚濁成分量は表のとおりです。
豚の場合、平均体重が人間とほぼ同じでありながら、豚1頭のふん尿量は人間の3.6人分、BODで10人分となります。

表2 ふん尿の汚濁負荷量
家畜
(区分)
排出量 BOD SS COD N P
濃度 負荷量 濃度 負荷量 濃度 負荷量 濃度 負荷量 濃度 負荷量
kg/日 mg/l g/日 mg/l g/日 mg/l g/日 mg/l g/日 mg/l g/日
ふん
尿
混合
1.9
3.5
5.4
60,000
5,000
(24,000)
114
18
(130)
220,000
4,500
(80,000)
418
16
(430)
27,000
3,300
(12,000)
51
12
(63)
10,000
5,000
(6,800)
19
18
(37)
7,000
400
(2,700)
13.3
1.4
(14.7)
ふん
尿
混合
30
20
50
24,000
4,000
(16,000)
720
80
(800)
120,000
5,000
(74,000)
3,600
5,000
(3,700)
12,000
3,000
(8,400)
360
60
(420)
4,300
8,000
(5,800)
129
160
(290)
1,700
150
(1,100)
51
3
(54)
(注)汚濁負荷量(g/日)=排出量(kg/日)×汚濁物質濃度(mg/l)

2)肥料成分
生ふんの肥料成分含量は畜種によって様々です。牛ふんは肥料成分は少ないが、繊維質の有機物に富み、鶏ふんは窒素、リン酸、カルシウムなどの肥料成分が高く、豚ふんはその中間で、比較的リン酸を多く含んでいます。

表3 生フンの無機成分含量
(乾物%)
    乾物率 N P2O5 K2O CaO MgO Na2O T-C n f
採卵鶏 M
ふん CV
36.3
42.3
6.18
21.50
5.19
28.80
3.10
9.80
10.98
25.50
1.44
21.60
-
-
34.7
21.5
5 50
ブロイラー M
ふん CV
59.6
-
4.00
-
4.45
-
2.97
-
1.60
-
0.77
-
-
-
-
-
1

2

ふん M
CV
30.6
24.1
3.61
17.30
5.54
18.00
1.49
54.40
4.11
35.50
1.56
39.60
0.33
53.60
41.3
0.4
7

62

尿 M
CV
2.0
-
32.50
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1

11

ふん M
CV
19.9
26.3
2.19
15.4
1.78
11.9
1.76
36.5
1.70
18
0.83
24.6
0.27
-
34.6
22.3
10

100

尿 M
CV
0.7
-
27.1
-
tr
-
88.6
-
1.43
-
1.43
-
-
-
-
-
1

6

注)M:平均値、CV:変動係数、n:回答場所数、f:分析点数

日本で発生している家畜ふん尿に含まれている肥料成分の総量は、窒素で約68万t、リン酸で約45万t、カリで約55万tと試算されており、その量を化学肥料成分の使用量と比較したのが下図です。家畜ふん尿に含まれている肥料成分量は現在、日本で使用されている化学肥料の成分量にほぼ等しいことがわかります。
また、化学肥料の原料となる石油やリン鉱石・カリ鉱石はほぼ100%輸入されているので、家畜ふん尿を肥料資源として有効に利用することは自然界の物質循環機能を生かし、環境への負荷軽減のために非常に重要なことです。

図4 化学肥料とふん尿の成分量


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