北部家畜保健衛生所 防疫課


 PRRS(豚繁殖・呼吸障害症候群)ウイルス、豚サーコウイルスは最近になって注目されるようになったウイルスです。PRRSウイルスはPRDC(豚呼吸器複合感染症)、豚サーコウイルス2型はPMWS(離乳後多臓器発育不良症候群)の原因と言われており、ともに離乳〜肥育初期の子豚の損耗に大きく関わっています。これらウイルスに共通する特徴はウイルス感染だけでは病気にはならないものの、他の病原体の複合感染により症状を増悪させるものです。残念ながら県内の多くの農場がすでにこれらウイルスの侵入を受けていますが、被害を最小限にとどめるには下記の項目を参考にして下さい。
1)PRRS
 好発日齢は40〜80日齢で、沈鬱・食用不振・発熱・削痩・腹式呼吸などがみられます。発病した子豚は死亡するか、ヒネ豚になります。
2)豚サーコウイルス2型
 好発日齢は30〜90日齢で、発育不良・呼吸困難(腹式呼吸)・頻呼吸・黄疸・下痢・体表リンパ節の腫大などがみられます。発病豚の死亡率は80%以上です。
 このように、2つのウイルスの症状は似通っていて、区別は困難です。また、両方のウイルスが同時に感染していることもあります。
 離乳〜子豚舎におけるウイルス抗体陽性率と事故率の農場事例をグラフに示しました(図)。98年と00年を比べてみると、抗体陽性率の上昇にともない事故率も増加しています。このように豚群の感染レベルは被害の大きさに関係するため、感染レベルを下げる(上げない)必要があります。また、感染レベルが母豚群・子豚群ともに低いケースでは臨床的な異常は認められない場合が多いですが、母豚群・子豚群ともに高いケース、子豚群のみ高いケースでは影響は深刻となります。
 感染経路には垂直感染(母から子へ)と、水平感染(離乳子豚同士)があります。非感染母豚から生まれた子豚や初乳摂取不足など移行抗体の少ない子豚は容易に感染を受け、新たな感染源となります。偽症豚は早期発見により摘発・隔離・淘汰して下さい。繁殖豚や育成豚で感染が確認されたものに対しても(ほとんどの場合難しいと思いますが)淘汰するのが望ましいです。すぐにできる対策として、一般的な衛生管理の徹底が奨励されます。快適な環境作り・適正な消毒はウイルスの蔓延防止だけではなく、2次感染防止にもつながります。また、汚染農場からの導入はできるだけ避けたほうが無難です。


 PRRSに対しては生ワクチンが市販されています。しかし県内ではワクチンを使用している農家はなく、使用にあたっては、家畜保健衛生所にご相談ください。PRRS・豚サーコウイルスで複合感染により病勢悪化につながる可能性の高いものとして一番にあげられるマイコプラズマをまずワクチンで予防することが必要です。また抗生剤の使用は、これら免疫抑制ウイルスの侵入が確認された場合、子豚の発病を抑えるために用います。
 同様の症状で死亡するケースが目立つ場合には被害が大きくなる前にぜひ家畜保健衛生所で病性鑑定を受けて下さい。ウイルスは同じでも複合感染する病原体は様々です。また、最終的に死に至らしめている併発病は農場個々で特徴的なものである事がほとんどです。ウイルス関与の確認もさることながら、病原体を突き止めることで、より効果的なワクチンや抗生剤を選択することができます。どうぞお気軽にご相談ください。
北部家畜保健衛生所:TEL 0767-68-3636
南部家畜保健衛生所:TEL 076-257-1262

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