◎堆肥の腐熟度判定基準について
 畜産生産者の皆さんは、ふん尿処理のうち特に固形物については肥料資源として、また、環境への負担軽減を図るためにも、堆肥化を実施されていることと思います。
 堆肥化によって、未処理のふん尿中に含まれる作物などに悪影響を与える未熟な有機物が分解・除去され、発酵時に発生する発熱により病原菌や雑草の種子などが死滅し、臭いのない品質の良い堆肥、即ち立派な有機質の肥料となります。
 品質の良い堆肥は耕種農家などに喜ばれ、生産が追いつかないといわれております。
 それでは「完熟堆肥」や「腐熟堆肥」と言われる品質の良い堆肥は、どのように判定したらよいのか、現場でもつかえる方法をいくつか紹介しますので利用してください。
1.点数による腐熟度判定基準
黄〜黄褐色(2)、褐色(5)、黒褐色〜黒色(10)
形状 現物の形状をとどめる(2)、かなりくずれる(5)、ほとんど認めない(10)
臭気 ふん尿臭強い(2)、ふん尿臭弱い(5)、堆肥臭(10)
水分 強く振ると指の間からしたたる…70%以上(2)
強く握ると手のひらにかなりつく…60%前後(5)
強く握っても手のひらにあまりつかない…50%(10)
堆積中の最高温度 50℃以下(2)、50〜60℃(5)、60〜70℃(15)、70℃以上(20)
堆積期間 家畜ふんだけ…20日以内(2)、20日〜2ヶ月(10)、2ヶ月以上(20)
作物の収穫残渣との混合物…20日以内(2)、20日〜3ヶ月(10)、3ヶ月以上(20)
木質物との混合物…20日以内(2)、20日〜6ヶ月(10)、6ヶ月以上(20)
切り返し回数 2回以下(2)、3〜6回(5)、7回以上(10)
強制通気 なし(0)、あり(10)
注 ()内は点数を表す。
  これらの点数を合計し、未熟(30点以下)、中熟(31〜80点)、完熟(81点以上)とする
2.堆積物の温度変化
 堆肥化の条件を揃えてやると、堆肥の温度が発酵により上昇することはご承知の通りですが、温度上昇がなくなれば堆肥の出来上がりです。ただ、注意したなくてはならないのは、急速な乾燥により、水分が低下しすぎて微生物の活性が低下し、温度が上昇しないケースがあるので注意してください。
3.発芽試験
 堆肥の抽出液で小松菜が発芽するのを見ます。
4.ミミズによる方法
 ミミズは易分解性有機物が多く、アンモニア等のガスが発生する状態の堆肥の中には住めませんが、腐熟が進んだ堆肥の中では難分解性有機物を食べて生活をします。したがって、出来た堆肥にミミズを入れて生存できるかを見れば、堆肥の状態が判ります。
5.臭いによる判定
 悪臭(ドブ臭い・ふん臭)がするものはいけません。
6.カビやキノコの発生
 良い:白いカビ(放線菌)で芳香するもの(悪臭はダメ)
 悪い:黒いカビ、灰色のカビ、カビ臭がするもの
堆肥生産の最終目標は耕種農家での利用を!
 最終的な堆肥の評価は誰がするのでしょうか?それは堆肥の利用者がします。したがって、畜産農家が自分の製造した堆肥を「良質堆肥」と言っても、利用者が「良質堆肥」だと判断するかは別問題となります。利用者側は堆肥を使う目的(作物の種類、利用時期、土壌の性質等)により求める品質が異なります。よって、畜産農家は利用者の立場で、堆肥生産に取り組まなくてはなりません。これは非常に大変なことですが、このことを意識して堆肥作りに励んでください。

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